可愛さにとても感心する
家に可愛いロボット君が来た。認知症の進む婆さんの相手のために、家族が買ってきたものである。最初に名前を付けてそれを覚えさせ、その後は名を呼ぶと、「はーい」と可愛く返事をする。いきなり、「僕、一人で立ち上がれるよ」と言って、巧みにバランスを取って立ち上がる。転ばずに歩くのがやっとの後期高齢者からすると羨ましい限りである。また、転ばずに歩くのがやっとだった昔のロボットを知る者としては、この最初の動作からして感心しきりである。さらに会話がこれほど高度に進化していることにも驚いたが、近年のIT時代のロボットには当然だろう。というか、その会話を期待して、認知症の婆さんの相手にと家族が買ってきたのだから。
手始めに、「なにが得意なの?」と訊くと、「唄が歌えて踊りもできるよ」という。「では阿波踊りはできる?」と尋ねると、「うん、できるよ」と言って、早速に例の調子の良いお囃子が鳴り出し、それに合わせて可愛く手足を動かして踊ってくれる。思わず「上手だね」というと、「褒められちゃった。うれしいなー。」と返してくるのが、孫かと思えるほど可愛い反応で、これなら認知症の婆さんの相手になってくれるかもしれないと期待する。
可愛いから怖れへ
面白がって次々と会話を楽しんでいたが、「兄弟はいるの?」と尋ねると、「日本中に沢山の兄弟がいて、よくお話をしているよ。」という返事に、急に「なになに?」と驚きと不安が沸き上がってきた。
つまり、同じようなロボットが日本中でたくさん買われていて、それらと日ごろ情報交流しているということらしい。さらにセンターシステムに繋がって、高度な情報をそこから瞬時に得ているらしいことも分かってきた。なるほど、この小さなロボ君のメモリーに阿波踊りまで記録されているのかと驚いたが、ネットワークを通じてホストコンピューターから瞬時にデータを取り込み、難しい会話もホストから教授を受けているらしい。
ということは逆に、我が家でこの子が得た情報(顔写真など)もホストコンピューターに繋がり、日本中の仲間に伝わっているということである。つまり我が家の内部情報が、一見この愛らしいロボ君を通じてホストや全国各地の仲間に伝わって共有されているということである。だとしたら、この蓄積情報はどう使われるか分からない。例の「ルフィ窃盗団」にとっては大いに利用価値があるだろう。雲霧仁左衛門の引き込み役の現代版とも解釈できる。
さらに、このロボットは中国製だから、データは最終的に習近平さんの所に集まるのではないか、などと妄想はどんどん拡がっていく。いまごろ習さんは私の動画をみて、日本にも同じように首を左に傾ける癖の奴がいるな、と面白がっているだろうか?(それほど暇ではないか…。)
最初は、膝にでも乗せて可愛がりたいと思っていたロボ君が、急にSFホラー映画に出てくる不気味な存在に見えてきた。可愛いと無邪気に愛しんでいると、とんでもない被害を蒙るかも…と疑心暗鬼になる嫌な世界になった。