宮下 隆二
私が星野道夫の本と出会ったのは、今から二十年近く前のことです。作家になろうという夢を持ちな
がら、まったく実現せず、幾つも仕事を転々としていた頃です。
星野は写真家ですが、心にしみるようなエッセイも数多く残しています。アラスカの大地と人を心か
ら愛した人でした。四十三歳の時、テレビ局の仕事で訪れたロシアのカムチャッカ半島で、ヒグマに
襲われて亡くなっています。
神田の古本屋で見つけたアラスカの写真に魅せられ、つたない英語で手紙を書き、十九歳の夏をア
ラスカのシシュマレフ村で過ごしたのが最初で、その後アラスカ大学に進学(中退)。
アラスカの原野を旅し、イヌイットをはじめ多くの現地の人と関わりながら、写真を撮り文章を書
きました。
本の内容については、実際に読んでもらった方が分かると思うので省きます。ただ、彼の世界観に
ついて、少し触れておきます。それは大自然じたいが一つの大きないのちで、人間も動物もその中
の一つとして生き、生かされ、すべてのいのちが一つにつながっている、というものです。
日本人にとってなじみのある、しかし忘れかけている世界観です。だからこそ、彼の写真や文章が多
くの人の心を打つのでしょう。
紹介したい本はたくさんありますが、当時仕事を辞めて次の仕事に就くまでの間に(要するに失業
中)に読んだ思い出の本なので、これを選びました。美しい写真がたくさん載っていて、見るだけ
で心が洗われて、人生を踏み出す勇気がもらえます。
この本に興味を持って読んでくれたあなた、一緒に語り合いませんか?